乙女心と秋の経穴

静脈の透ける白い太ももに浮かぶ大きな青痣を見ながら、どこからかやり直せないものかと、タカシは考えていた。


今日の実習パートナーであるトモコとは昨晩、つい12時間程前までは恋人だった。


近頃お互いにギクシャクしているのは感じていたが、ぶつかる度にどちらともなく譲ることで事なきを得ていた。
というより問題を先送りにしていた。


昨晩はいつものようにトモコはタカシのアパートで夕飯を済まし、二人で取り留めもない話をしていた。


どんなきっかけだったかも思い出せないが、トモコの生理が近いこともありタカシは鍼をしようと提案した。


全く他意はなく、ただただ善意であった。
善意であったはずだ。


脈を診て、いくつかの経穴に鍼をした後、血海に手をやったところトモコはいつも以上に大きく反応した。


そこに静かに鍼をたて、そろりそろりと刺入していく。

 









ぐぐぐっと鍼が渋った










----その瞬間!


トモコの下腿から大腿、腹部そして面部にかけて模様が浮かび上がる!


経絡現象!?


否!これはトモコの家系に受け継がれる特殊な能力!


言い伝えだけが残り、実際にその能力が日の目を見ることはなかったため、伝説と考えられていた。


そう!能力発動にはカギが必要だったのだ!


そのカギとなったのがタケシ!
彼が何故トモコにとって特別な存在なのかは物語と共に明らかになるだろう!


こうしてタカシとトモコの関係は一般における「恋人」と呼べるものでは無くなってしまった!


しかし想像したこともないような変化を簡単に受け入れることはできない。
どこからかやり直せないものかと、タカシは考えていた。