外関の歴代名家応用

外関という経穴が好きなのでよく使います。(298日ぶり4度目)



今回は『要穴八十一』という本に記載される外関の歴代名家応用を抜粋しつつ、愚考していきたいと思います。


黄帝内経

・病実則肘攣、虚則不收。


霊枢の経脈編に
手少陽之別,名曰外関。去腕二寸,外繞臂,注胸中,合心主。病實則肘攣,虛則不收。取之所別也。
の記載がありますね。
外関の位置からしたら、そら腕には効くだろうと。


《甲乙経》皇甫謐、282年

・肘中濯濯、臂内廉不化及頭。
・耳焞焞渾渾無所聞、外関主之。
・外関、会宗主耳焞焞渾渾無所聞。
・外関、内庭、三里、大泉、商丘、主噼、噤


渾渾焞焞は医学百科に解説があり

病狀名。形容聽覺失聰,反應遲鈍之癥。多由濕濁上蒙,肝膽實火或腎氣虛所致。《素問·至真要大論》:“心痛耳鳴,渾渾焞焞。”《靈樞·經脈》:“是動則病耳聾渾渾焞焞。”  

と書かれています。


黄帝内経には渾渾焞焞とあるのが、甲乙経はなぜ焞焞渾渾になっているのか?

今回はこの渾渾焞焞に注目していきたいと思います。(原典はどうなってるんでしょうか?)


《外台秘要》王燾、752年

・主肘中濯濯、臂内廉不化及頭、耳焞焞渾渾聾無所門聞、主噼、噤。


外台秘要も焞焞渾渾派のようです。


《医心方》丹波康頼、984年

・主肘中濯濯、耳焞焞、臂内廉痛、口噼、噤。


もはや焞焞のみ!
当時の日本には渾渾が伝わらなかったのか。


《銅人経》王惟一、1026年

・治肘臂不得屈伸、手五指盡不能握物、耳聾無所聞。


一旦落ち着きましょう。
とにかく外関は聾に効くようです。


玉龍経》王国瑞、1329年

治傷寒自汗盗汗、発熱悪風、百節酸疼、胸滿拘急、中風不遂、腰脚拘攣、手足頑麻冷痛、偏正頭風、眼中冷痛、冷涙、耳聾、眼風。


玉龍経の記載はいいですね、渾渾も焞焞言わないし。
個人的には外関に過分の期待を寄せているのでこれくらい効いてほしいところです。


鍼灸聚英》高武、1529年

主耳聾焞焞渾渾無聞、手五指盡不能握物、実則肘攣瀉之、虚則不収補之。


また焞焞渾渾きちゃった…


鍼灸大成》楊継州、1601年

主耳聾渾渾焞焞無聞、手五指盡不能握物、実則肘攣瀉之、虚則不収補之、又治手足不得屈伸。


とうとうきました!渾渾焞焞!

黄帝内経以来1600年以上ぶり。
前前前前前前前前前前前前前前前前前前前前前前前前前前前前前前前世から待ってた。


《鍼方六集》呉崑、1618年

主耳聾焞焞渾渾、目翳、頬痛嗌腫、耳後痛、脅肋肘臂腫痛、無名指不用、五指盡痛不能握物、傷寒無汗、寒熱往来。


鍼灸大成以降は渾渾焞焞派が盛り返すかと思いきや、焞焞渾渾派の強さ健在。


気になるのが鍼方六集は傷寒の無汗なんですね。
玉龍経では傷寒自汗盗汗と書かれていましたが、どちらもいけるのでしょう!

三焦としての働きなのかも知れないし、もしくは他の経絡を介しての反応なのかと考えが広がりますが、とにかく効くのでしょう!!!


なぜなら外関だから!!!!!


《類経図翼》張介賓、1624年

・主治耳聾渾焞無聞、肘臂五指痛不能握、若脅肋痛者瀉之。
・外関主治臓腑熱、肘臂脅肋五指疼、瘰癧結核連胸頸、吐衄不止妄行。


渾焞派も現れてどうしたらいいのか。

類経は臓腑熱が書かれているのが良いですね。張介賓は腑としての三焦を意識していたのではないかしら?と想いを馳せます。


鍼灸学簡編》中医研究院、1959年

主治前臂及肘部不得屈伸、手五指盡痛不能握物、上肢筋骨疼痛、瘰癧、耳聾、聾唖、衄血、牙痛、痄腮、胸脇痛、感冒、発熱、頭痛、咳嗽、暑病、腸癱、霍乱(非真性霍乱)、急驚風、高血圧、小児麻痺後遺症等。配足臨泣治手、足少陽経所経過部位興其所屬絡之臓腑的病証、配大椎、曲池、合谷治感冒発熱、配肩髃、曲池、手三里、合谷治上肢癱痪。


なんでしょう…

近代になると中国の思惑で効果をモリモリに盛っているのでは?と勘繰ってしまいます。

玉龍経は許せるのに鍼灸学簡編は許せない不思議。


鍼灸学》孫國傑主編、1997年

主治頭痛、耳聾耳鳴、肘臂不能伸屈、手指痛不能握、手顫、熱病、瘰癧、腹痛便秘。


鍼灸学簡編はやり過ぎ感ありましたが、こちらは更に時代が近いし現実的で面白さを感じない不思議。



以上が歴代名家応用の抜粋ですが、上記以外にも現代臨床研究として、外関をぎっくり腰、帯状疱疹、偏癱、失眠に使用した臨床研究も記載されているのでオススメです。

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