【12穴だけで】馬丹陽天星十二穴歌【何でも治す!】

以前Twitter上でのやりとりの中で馬丹陽天星十二穴の話があり、その場ではメインの話題ではなかったので我慢したのですが歌賦大好きマンの私としては天星十二穴の話がしたい!!!



という気持をぐっと堪えていましたが、どうしても我慢できないのでブログに吐き出しておきます。



今回は鍼灸の歌賦の中から上記の馬丹陽天星十二穴歌をご紹介しつつ、よろしければ私のポンチ話にお付き合いいただければと思っております。



そもそも歌賦(かふ)とはなにか?


という方もいらっしゃるかも知れないので簡単に説明すると鍼灸覚え歌です。



肚腹三里留
肚腹は三里に留め

腰背委中求
腰背は委中に求め

頭項尋列缺
頭項は列缺に尋ね

面目合谷収
面目は合谷に収む



これは知らない鍼灸師を探す方が難しいくらい有名ですが、これこそが歌賦。


朱権作の四総穴歌です。



ほとんどの方が学生時代に試したことがあるかと思います。

そしてこんなに効くのか!ってくらい効く。



三里はお腹の症状に…合谷は面目だけでなくなんでも効くし…


そしてそんな経穴の中で列缺…

私は列缺がこの中に入ってることにどうしても違和感を感じてしまいます。



足三里!!!合谷!!!委中!!!


どれも圧痛、反応と分かりやす過ぎるほど分かりやすい経穴のなかで列缺?


しかも効くのは頭項…喉痛ではなく。



この場合の列缺はどういう取穴をするか、頭項というけれど前頭部、側頭部、頭頂部とどのあたりなのかと…

頭項ならば後谿など他にもありそうですが、なぜここに列缺なのか…?





ところで、M-1グランプリ2018にて審査員のナイツ塙が霜降り明星の2人を『強い2人』と評したんですが、経穴にも『強い経穴』があるとすれば、足三里、合谷、委中は間違いなく『強い経穴』にではないかと思います。

芸人で言えば明石家さんまクラスの『強さ』ではないでしょうか?



列缺が他の四総穴の経穴と同様『強い経穴』なのか、それともスポット的に効果を出すものなのか…
まだ列缺のポテンシャルを引き出せていない自分がくやしいです!(ザブングル加藤




本題

馬丹陽天星十二穴治雑病歌の紹介していきたいと思います。



まず経穴だけを書き出すと、


三里内庭穴、曲池合谷接
委中配承山、太衝崑崙穴
環跳与陽陵、通里並列缺


以上12穴。



360の経穴を上手く組合せ使いこなしても、この12穴には及ばない。というようなことも書かれています。



以下、私の適当な訳なので斜め読みして下さい。
微妙なところは?をつけているので、ご指導いただけると幸いです。



・三里膝眼下、三寸両筋間。
能通心腹脹、善治胃中寒、腸鳴併泄瀉、腿腫膝胻痠、傷寒羸痩損、気蠱及諸般、年過三旬後、鍼灸眼便寛。
取穴当審的、八分三壯安。


腹が張るのを通じさせ、胃に寒邪が入ったものを治す。
傷寒で痩せ衰えた、肝鬱気滞による腹の張りに効く。
30歳を越えたらマメに鍼灸をすると眼がハッキリする。
鍼は八分、灸は三壯。


私も昨年末から毎日足三里にお灸をしているんですが爪甲剥離が良くなったことと、普段この時期はアレルギーで顔がびしょびしょなんですが、今のところ花粉症の薬を飲まなくてもなんとかなっているので、やっぱり足三里すごい。強い。




・内庭次趾外、本属足陽明。
能治四肢厥、喜静悪聞声、癮疹咽喉痛、数欠及牙疼、瘧疾不思食、鍼着便惺惺。


四肢の冷え、喜びを静め人の声物音を怖がる、蕁麻疹?喉の痛み、頻繁なあくび、歯の痛み、マラリア、食べられないものをハッキリと治す。



・曲池拱手取、屈肘骨辺求。
善治肘中痛、偏風手不收、挽弓聞不得、筋緩莫梳頭、喉閉即欲死、発熱更無休、遍身風癬癩、鍼着則時瘳。


肘の痛み、片麻痺、弓を引けず頭をとかすことができない、喉の腫れ痛み、発熱し解熱しない、風による皮膚病?が鍼したらすぐ治る



・合谷在虎口、両指岐骨間。
頭疼并面腫、瘧病熱還寒、歯齲鼻衄血、口噤不開言。
鍼入五分深、令人即便安。


頭痛と顔の腫れ、マラリア、虫歯、鼻血、口を開けられないもの治す。鍼は五分で安らかに刺す?安らかになる?



・委中曲月秋裏、横紋脈中央。
腰痛不能挙、沈沈引脊梁、痠疼筋莫展、風痺復無常、膝頭難伸屈、鍼入即安康。


腰を動かせない、背中が重たい?重怠く動きにくい、遊走性の痛み?膝の屈伸困難が鍼をしたらすぐ治る。



・承山名魚腹、腨腸分肉間。
善治腰疼痛、痔疾大便難、脚気併膝腫、輾転戦疼酸、霍乱及転筋、穴中刺便安。


腰痛、痔、便秘、脚気で膝が腫れ、痛みでじっとしていられず戦慄する、嘔吐下痢、腓返りに鍼刺して安静にさせる?安らかになる?


・太衝足大指、節後二寸中。
動脈知生死、能医驚癇風、咽喉併心脹、両足不能行、七疝偏墜腫、眼目似云朦、亦能療腰痛、鍼下有神功。


太衝の脈で病勢を知る、???、喉の腫れ胸の腫れ、鼠径ヘルニア?、眼のかすみ、腰痛に神のような効果。



・崑崙足外踝、跟骨上辺尋。
転筋腰尻痛、暴喘満衝心、挙歩行不得、一動即呻吟、若欲求安楽、須于此穴鍼。


腓返り腰臀部痛、???(奔豚的なもの?)、歩行できず、動くと呻く、もし楽になりたいのならここに鍼をする。



・環跳在髀枢、側臥屈足取。
折腰莫能顧、冷風併湿痺、腿胯連腨痛、転側重欷歔、若人鍼灸後、頃刻病消除。


曲げられない腰痛、風寒湿痺、股関節から下腿まで痛む、動くと痛む、もし鍼をすればすぐに病は消える。



・陽陵居膝下、外臁一寸中。
膝腫併麻木、冷痺及偏風、挙足不能起、坐臥似衰翁、鍼入六分止、神功妙不同。


膝が腫れ麻痺、寒痺および片麻痺、足を挙げられない、老人のような動き?鍼を六分入れると他にはない効果が!!!



・通里腕側後、去腕一寸中。
欲言声不出、懊悩及怔忡、実則四肢重、頭腮面頬紅、虚則不能食、暴瘖面無容、豪鍼微微刺、方信有神功。


喋りたいが声がでない、悩みと動悸、実では四肢の重さ、面部の赤み、虚では食べられず、声出せず顔色悪い?豪鍼を微微っと刺せば神懸かり的にに効く。



・列缺腕側上、次指手交叉。
善療偏頭患、遍身風痺麻、痰涎頻上壅、口噤不開牙、若能明補瀉、応手即如拿。


偏頭痛、片麻痺痰湿?が上を塞ぐ、口が開かない、もし補瀉を明確に行えば、手に応じて治る



最後に来ました、列缺!

そしてここで書かれている効果を見ると、先程の『頭項尋列缺』の頭項とはどこかという問題の答えがでるかも知れません。



ここから愚考ですが、

天星十二穴の中には四総穴歌の経穴が全て含まれておりました。


もう少し掘り下げると天星十二穴歌は1329年、元の時代に書かれた「鍼灸玉龍経」に記載されています。
そして四総穴歌は明の時代(たぶん1406年)に書かれた「乾坤生意」に記載されている歌賦。



書かれた年代から考えると四総穴歌は天星十二穴治雑病歌を参考にして書かれたのではないか?と…

そうすると列缺の頭項は側頭部のことなのではないでしょうか…!?



他にも腰背部に関して、委中以外にも効果のある経穴が多いことから腰背痛は崑崙、環跳など広く取った方が有効ではないか…

足三里は実証的な腹部の疾患に効果的とされていたのではないか…


と、四総穴歌をまた違った角度から考えられるかも知れません。



私が勝手な考察なので正しくないかも知れないし、治療に活きるかどうかも分からないような自己満足の極みですが、古典を掘り進んでいくうちにアレとコレがもしかしたら繋がるのではないか!?というこの感じがもうね…キマるとトびます。



皆さんも是非ともお気に入りの歌賦を探して、合法的にトびましょう。






おまけ


中国歌賦はハードルが高いという方は、澤田流鍼灸いろは歌というのもありまして、



『い』いのちより長きを希う人々よ、脛の三里を常にたしなめ

『ろ』肋膜炎と胸の動悸を治すには、手の郄門が何より効く

『は』腹痛が食い合わせより起こりなば、直ちにすえよ裏の内庭



みたいに分かりやすさしかないので、未見の方は是非ともググって使ってみてください。



『ま』まてしばし子無き婦人も嘆くなよ、脾兪・腎兪・次髎と気海・外陵

『さ』さいさいにお腹壊して痩せる子に、身柱・少衝・命門さらに天枢


後半になるほど無理感が出てくるのも澤田先生らしさがあってまた良いです。