ハリトラーメン

私がかねてより提唱している《鍼灸=ラーメン論》というものがありまして…


鍼灸とラーメンというのは中国から渡ってきて日本独自の発展をしたという点で、ほぼ同じものと言っても過言ではありません。


店主、院長が頑固そうだったり腕組みしてたり、根拠なく自分が1番だと思っていたり、意義の分からないオリジナル技を考え出してみたり、ラーメン職人と鍼灸師の共通点を挙げだしたらキリがありません。


上記以外にも根拠はありますが、とにかく鍼灸とラーメンは同じもの。
ラーメン業界を紐解くことで鍼灸業界のことが分かるんです。



そして今回は伝統鍼灸の未来を、今一番面白いラーメン漫画『ラーメン再遊記』をテキストにしながら考えていきたいと思います。


(この記事における伝統鍼灸とは、柳谷素霊から始まった日本の鍼灸の各流派のこととさせて下さい)



まず知らない方の為に『らーめん再遊記』について説明させていただくと、『ラーメン発見伝』『らーめん才遊記』から続く、美味しんぼ的ラーメン漫画の3作目であり、主人公はかの有名なラーメンハゲこと芹沢達也。


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主人公の芹沢達也についても念のために説明すると…


前々作『ラーメン発見伝』では主人公、藤本浩平のライバルとして、前作『らーめん才遊記』では主人公、汐見ゆとりの師匠として活躍し、彼の人気のお陰で今作まで続いている言っても過言ではありません。


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ラーメンを大衆料理、B級グルメから脱却させるために数々の創作ラーメンを生み出し、自身の店だけでなくプロデュースを手掛けた店も繁盛させ、保守的で懐古主義な中華そば原理主義者たちを黙らせてきました。


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作品中ではこういう輩はラーメンが好きと言いながらラーメンの進化を邪魔する者と描かれています。


そして《何の枠にも囚われない自由な創作麺料理》こそがラーメンの主流となり、その立役者であった彼はニューウェーブのカリスマ、天才的なラーメンコンサルタントとなりました。



そんな彼が今作『らーめん再遊記』では若手の台頭によりラーメンに対する情熱を失ってしまいました。



その若手とは芹沢をオールドウェーブ呼ばわりする男、米倉。


彼は自然養鶏の比内地鶏を使ったスープに、厳選した醤油、小麦を使い細部にまで拘り、高級フレンチに匹敵する新時代の料理を目指した「普通のラーメン」で日本のラーメン界で初めてムシュロン2つ星を獲得した、新世代系のエース。


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芹沢はニューウェーブ系としてラーメンをB級グルメから脱却させるために尽力しましたが、世界的グルメガイドであるムシュロンに選ばれたのは自分よりも下の世代の米倉だったということが、芹沢の情熱が失われた要因でもあります。



ニューウェーブ系vs新世代系の構図から始まり、芹沢は如何にしてラーメンへの情熱を取り戻していくのか!?というところから話が始まります。



ラーメンの補足もしておきます。



ニューウェーブ系ラーメンというものは、ラーメンの進化を邪魔する保守的で懐古主義な中華そば原理主義者、昭和の中華そばへのアンチテーゼとして生まれました。


・脱B級グルメの本物志向 
・創作ラーメンの重視
・こだわりの食材や調理法のアピール
・小綺麗で洒落た店作り


これらを売りに、それまでラーメンファンでなかった層を取り込みながらブームを拡大し、ラーメンを固有の文化へとなるよう上のステージへ押し上げました。



そして対する新世代系はニューウェーブが作り上げた流れの上で、昭和の中華そばの良いところは吸収し更にブラッシュアップし、ハイブリッド醤油ラーメンと言われるような本物志向のラーメンを作り上げました。



この昭和の中華そばに対しての考えがムシュロンに認められるか否かで芹沢と米倉、ニューウェーブ系と新世代系の明暗が分かれました。


芹沢(ニューウェーブ系)はアンチ昭和の中華そばであり、B級グルメに甘んじる前の世代への反発心からそれまでにない新しい味を生み出してきました。


それだけに昭和の中華そばを古臭い悪しきものとして考え、ブラッシュアップすることができなかった。



米倉(新世代系)はニューウェーブ系から影響を受けるものの昭和の中華そばに対しての反発心は無く、良いところは全て取り入れる姿勢。


そして昭和の中華そばのフレームを使い、ニューウェーブ系の方法論によって全てを本物へと昇華させることができました。



というのが作中での構図ですが、これは現実のラーメン業界でも似たような流れがあるそうです。



そしてこれを鍼灸業界に当てはめて考えてみると…


現在、ニューウェーブ系を担ってくれているのは美容鍼灸ではないかと。



美容鍼灸が伝統鍼灸のアンチテーゼから始まった訳ではないと思いますが、美容という視点での集客、鍼灸院らしからぬサロン的な内装であったり、既存の鍼灸院とは関係を持たなかった層を取り込んでくれています。


それだけで鍼灸が文化として完全に根付くかというと難しいと感じますが、あと一押し二押しがあれば…そうなってくれるのではと期待しております。



この美容鍼灸ブームが本当に本当にうまくいって、ラーメンが中華料理の1つからラーメンという確立された料理になったように、鍼灸が医療として、美容として1つの選択肢になれば良い思います…



と、そうなった上でですよ!



新世代系ラーメンのように美容鍼灸の良い部分を吸収し、かつ伝統鍼灸を取り入れブラッシュアップした新世代系鍼灸院が現れると!


そしてロートルになった洒落臭い美容鍼灸どもを蹴散らせて伝統鍼灸が第一線を奪う!!!



そこで初めて代替医療でもなく、美容の一部でもなく、鍼灸鍼灸として確立された立場ができるのではないかと。



ラーメン業界を鑑みて今後の鍼灸業界でこういった流れが起こることは間違いないでしょう!



なので伝統鍼灸の業界のシェア低かろうが、崩壊の危機にあろうが大丈夫です!!!


今は美容鍼灸に任せて需要を広げてもらいましょう。
そして伝統鍼灸は腕を研くなり、後進を育てるなり来るべき日に備えてください。



頑張れ美容鍼灸

負けるな伝統鍼灸





そしたら美容鍼灸もしないし、伝統鍼灸でもない私はどうしたら良いのか分からないので、とりあえず天下一品食べてきますね。

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