がんばれ!文伯くん!【三陰交+合谷の巻】
昔むかし、宋という国に医術が趣味の王子がおりました。
ある日、王子が医術の先生である徐文伯と庭で散歩をしていると1人の妊婦を見つけました。
王子は先日教わった《脈で胎児の性別を判断する方法》を披露するために、妊婦の脈を診ます。
王子は自信をもって「女だ」と言いますが、徐文伯は「一男一女でございます」と答えます。
間違っていると言われた王子はカンカンに怒り、妊婦の腹を切り裂いて確かめようとします!!!
「そんなことをしたら妊婦が死んでしまいます」
徐文伯は王子を止め、更に「鍼をさせてください」と続けました。
そして妊婦の三陰交に瀉法を、合谷に補法をすると鍼に応えて…
堕ちました。
一男一女なり。
という当時の中国の倫理観とか王の絶対さ、みたいのが詰まった私のとても好きな話です。
銅人経に記載されていて、インパクトが大きいのでかなりメジャーだと思っていましたが、もしかしたらあまり知られていないのかと思い楽しい絵本風にしました。
三陰交、合谷、堕胎というキーワードだけが残ってしまったのか、ただ危険だ!もしくは迷信だ!と嘘かホントかの二極的な話になると古典の立場がなくて悲しいなあと思う訳です。
三陰交に瀉、合谷に補と書かれているのだから逆に三陰交補、合谷瀉ならどうなのか?とか
三陰交と合谷を大きく陰陽と捉えて陰虚陽実になると降りやすいのか?
血と気と捉えて血虚気実になると降りるのか?(出典忘れましたが血虚の人は降りやすいらしいです)
脾経と大腸経と考えるとどうか?
足の三陰とすると、気の原穴とするとどうか?
他の経穴ではどうなのか?
ということを考えていくと寧ろ妊婦に対して使うべき経穴も浮かんでくるのではないかと思います。
そういった議論がなされると死せる古典がぶっ生き返って臨床が更に楽しくなるのでオススメです。
<追記>
私の個人的な妊婦さんへの三陰交、合谷の考え方です。
私は鍼灸の治療方法として、その人なりの根拠、信念があっての選択であればどんな治療方法でも全く批判はないです。
(意図的に患者さんに不利益を与える場合はダメ)
私の妊婦への三陰交、合谷の考えを分かりにくく例えると
《500年前ここまで津波がきました》
という石碑があったら、それが近所の頭のおかしいおじさんが作ったものでないなら、そこより海側には家を建てられないタイプです。
もし建てる必要があるのであれば最大限の対策をして家を建てる。
最悪の場合を想定して回避ルートを考える。
賛否あるかと思いますが、ご意見いただけると幸いです。