玉龍歌、玉龍賦比べ

時短効率化が進み、動画やニュースは倍速で流され、短さと分かりやすさが求められる風潮。
これをタイムパフォーマンス、タイパと言って所謂コスパのように新しい指標として重要視されるようです。


そんな時代に必要なものはなんでしょうか?


そうです。玉龍賦ですね。


玉龍"賦"は玉龍"歌"を元に後世の人たちが研鑽したもので、現代風に言うとファスト玉龍歌です。


例えば玉龍では

中風不語最難医,髪際頂門穴要知,更向百会明補泄,即時蘇醒免災危。


という歌が玉龍では

原夫卒中風、頂門百会。

となります。
文字数にして3分の1!
情報量約65%減!
必要なところを最小限に確実に伝える!!!


これでしょう!現代人が求めているものは!


このように玉龍歌の要点だけを集めた玉龍賦ですが単純に文字を減らしただけではなく、省略された経穴や、条件が変わっているものもあります。

今回はそういった点を抜粋し愚考していきたいと思います。



玉龍賦は先ほどの原夫卒暴中風、頂門百会。から始まるのですが、次の歌からいきなり洗礼を受けます。


脚気連延、里絶三交。

これは玉龍歌では

寒湿脚気不可熬,先針三里及陰交,再将絶骨穴兼刺,腫痛登時立見消。

となっており、足三里、絶骨、三陰交(陰交?)3穴を里絶三交の4文字で済ませるのはタイパ力ハンパないですね。



一方で

風市、陰市、駆腿脚之乏力。

これは玉龍歌では

膝腿無力身力難,原因風湿致傷残,倘知二市穴能灸,步履悠悠漸自安。

こちらは敢えて二市=風市、陰市であると丁寧に説明してくれます。
厳しさと優しさの使い分けが流石です。



次は経穴を変えてきてるパターン。

期門、大敦、能治堅痃疝気。

これは玉龍歌で該当しそうなのが

腎強疝気発甚频,気上攻心似死人,関元兼刺大敦穴,此法親伝始得真。

堅痃疝気と腎强疝気が同じものなのか分かりませんが、疝気といえば肝として分かりやすいように関元を期門に変えたのでしょうか。



そして

絶骨、三里、陰交、脚気宣比。

2度目の脚気、そして見覚えのある配穴…
余程大事なことなのか、もしくは里絶三交は流石に無理があると思ったのか…

やり過ぎると2度手間になるという教訓を遺してくれているのかも知れません。



風池絶骨。而療乎傴僂。人中曲池。可治其痿傴。

これは唯一玉龍歌にはないもので、真ん中辺りにしれっと書かれています。お洒落ですね。

配穴もなんだか玉龍歌と比べてパワー型の感じがします。



風湿博干両肩、肩髃。

肩端紅腫痛難当,寒湿相争気血旺,若向肩髃明補瀉,管君多灸自安康。

オレでなきゃ見逃しちゃうね。
寒湿か風湿か違います。だからと言ってどうということはないですが、私は風湿派です。



心兪腎兪、治腰腎虚乏之夢精。

胆寒尤是怕惊心、遺精白濁実難禁、夜夢鬼交心俞治、白環俞沾一般鍼。

腎若腰痛不可当、施為行止甚非常、若知腎俞二穴処、愈見医科神聖功。


これは2つを合わせたようなかたちです。

実は私は夢で鬼と一戦交えるタイプの剣士でして、その際には白環俞を使って鬼を滅しているのでここは玉龍歌推しです。


取内関于照海、医腹疾之塊。

腹中気塊痛難当、穴法宜向内関防、八法有名陰維穴、腹中之疾永安康。

この照海はどこから来たんでしょうか。

玉龍歌の陰維を見ると腎経であれば築賓を考えてしまいますが、腹の塊には照海の方が良いであろうとするまでに玉龍歌から玉龍賦までの200年の試行錯誤があったのではないかと想像すると胸熱です。



以上が玉龍歌と違いのある部分です。下に原文を貼っておきますので、よろしければ皆さんも探していただき発見がありましたら教えて下さい。



次回は『勝玉歌は玉龍歌に本当に勝てるのか!?』を検証していきたいと思います。



夫參博以為要。輯簡而舍煩。總玉龍以成賦。信金鍼以獲安。原夫卒暴中風。頂門百會。腳氣連延。里絕三交。頭風鼻淵。上星可用。耳聾腮腫。聽會偏高。攢竹頭維。治目疼頭痛。乳根腧府。療氣嗽痰哮。風市陰市。驅腿腳之乏力。陰陵陽陵。除膝腫之難熬。二白醫痔漏。間使勦瘧疾。大敦去疝氣。膏肓補虛勞。天井治瘰癧癮(病字去丙為軫)。神門治呆癡笑咷。欬嗽風痰。太淵列缺宜刺。尪羸喘促。璇璣氣海當知。期門大敦。能治堅痃疝氣。勞宮大陵。可療心悶瘡痍。心悸虛煩刺三里。時疫㾬瘧尋後谿。絕骨三里陰交。腳氣宜此。睛明太陽魚尾。目證憑茲。老者便多。命門兼腎俞而著艾。婦人乳腫。少澤與太陽之可推。身柱蠲嗽。能除膂痛。至陽卻疸。善治神疲。長強承山。灸痔最妙。豐隆肺腧。痰嗽稱奇。風門主傷冒寒邪之嗽。天樞理感患脾泄之危。風池絕骨。而療乎傴僂。人中曲池。可治其痿傴。期門刺傷寒未解。經不再傳。鳩尾鍼癎癲已發。慎其妄施。陰交水分三里。蠱脹宜刺。商丘解谿坵墟。腳痛堪追。尺澤理筋急之不用。腕骨療手腕之難移。肩脊痛兮。五樞兼於背縫。肘攣疼兮。尺澤合於曲池。風濕搏於兩肩。肩髃可療。壅熱盛乎三焦。關沖最宜。手臂紅腫。中渚液門要辨。脾虛黃疸。腕骨中脘何疑。傷寒無汗。攻復溜宜瀉。傷寒有汗。取合谷當隨。欲調飽滿之氣逆。三里可勝。要起六脈之沉匿。復溜稱神。照海支溝。通大便之祕。內庭臨泣。理小腹之䐜。天突膻中醫喘嗽。地倉頰車療口喎。迎香攻鼻窒為最。肩井除臂痛如拏。二間治牙疼。中魁理翻胃而即差。百勞止虛汗。通里療心驚而即差。大小骨空。治眼爛能止冷淚。左右太陽。醫目疼善除血翳。心俞腎俞。治腰腎虛乏之夢遺。人中委中。除腰脊痛閃之難制。太谿崐崙申脈。最療足腫之迍。湧泉關元豐隆。為治屍勞之例。印堂治其驚搐。神庭理乎頭風。大陵人中頻瀉。口氣全除。帶脈關元多灸。腎敗堪攻。腿腳重疼。鍼髖骨膝關膝眼。行步艱楚。刺三里中封太冲。取內關於照海。醫腹疾之塊。搐迎香於鼻內。消眼熱之紅。肚痛祕結。大陵合外關於支溝。腿風濕痛。居窌兼環跳於委中。上脘中脘。治九種之心痛。赤帶白帶。求中極之異同。又若心虛熱壅。少冲明於濟奪。目昏血溢。肝俞辨其實虛。當心傳之玄要。究手法之疾徐。或值挫閃疼痛之不定。此為難擬定穴之可祛。輯管見以便誦讀。幸高明而無哂諸。

 俗以玉龍歌扁鵲所撰。蓋後人依托為之者。玉龍賦又總輯其要旨爾。