玉龍歌、玉龍賦比べ
時短効率化が進み、動画やニュースは倍速で流され、短さと分かりやすさが求められる風潮。
これをタイムパフォーマンス、タイパと言って所謂コスパのように新しい指標として重要視されるようです。
そんな時代に必要なものはなんでしょうか?
そうです。玉龍賦ですね。
玉龍"賦"は玉龍"歌"を元に後世の人たちが研鑽したもので、現代風に言うとファスト玉龍歌です。
例えば玉龍歌では
中風不語最難医,髪際頂門穴要知,更向百会明補泄,即時蘇醒免災危。
という歌が玉龍賦では
原夫卒中風、頂門百会。
となります。
文字数にして3分の1!
情報量約65%減!
必要なところを最小限に確実に伝える!!!
これでしょう!現代人が求めているものは!
このように玉龍歌の要点だけを集めた玉龍賦ですが単純に文字を減らしただけではなく、省略された経穴や、条件が変わっているものもあります。
今回はそういった点を抜粋し愚考していきたいと思います。
玉龍賦は先ほどの原夫卒暴中風、頂門百会。から始まるのですが、次の歌からいきなり洗礼を受けます。
脚気連延、里絶三交。
これは玉龍歌では
寒湿脚気不可熬,先針三里及陰交,再将絶骨穴兼刺,腫痛登時立見消。
となっており、足三里、絶骨、三陰交(陰交?)3穴を里絶三交の4文字で済ませるのはタイパ力ハンパないですね。
一方で
風市、陰市、駆腿脚之乏力。
これは玉龍歌では
膝腿無力身力難,原因風湿致傷残,倘知二市穴能灸,步履悠悠漸自安。
こちらは敢えて二市=風市、陰市であると丁寧に説明してくれます。
厳しさと優しさの使い分けが流石です。
次は経穴を変えてきてるパターン。
期門、大敦、能治堅痃疝気。
これは玉龍歌で該当しそうなのが
腎強疝気発甚频,気上攻心似死人,関元兼刺大敦穴,此法親伝始得真。
堅痃疝気と腎强疝気が同じものなのか分かりませんが、疝気といえば肝として分かりやすいように関元を期門に変えたのでしょうか。
そして
絶骨、三里、陰交、脚気宣比。
2度目の脚気、そして見覚えのある配穴…
余程大事なことなのか、もしくは里絶三交は流石に無理があると思ったのか…
やり過ぎると2度手間になるという教訓を遺してくれているのかも知れません。
風池絶骨。而療乎傴僂。人中曲池。可治其痿傴。
これは唯一玉龍歌にはないもので、真ん中辺りにしれっと書かれています。お洒落ですね。
配穴もなんだか玉龍歌と比べてパワー型の感じがします。
風湿博干両肩、肩髃。
肩端紅腫痛難当,寒湿相争気血旺,若向肩髃明補瀉,管君多灸自安康。
オレでなきゃ見逃しちゃうね。
寒湿か風湿か違います。だからと言ってどうということはないですが、私は風湿派です。
心兪腎兪、治腰腎虚乏之夢精。
胆寒尤是怕惊心、遺精白濁実難禁、夜夢鬼交心俞治、白環俞沾一般鍼。
腎若腰痛不可当、施為行止甚非常、若知腎俞二穴処、愈見医科神聖功。
これは2つを合わせたようなかたちです。
実は私は夢で鬼と一戦交えるタイプの剣士でして、その際には白環俞を使って鬼を滅しているのでここは玉龍歌推しです。
取内関于照海、医腹疾之塊。
腹中気塊痛難当、穴法宜向内関防、八法有名陰維穴、腹中之疾永安康。
この照海はどこから来たんでしょうか。
玉龍歌の陰維を見ると腎経であれば築賓を考えてしまいますが、腹の塊には照海の方が良いであろうとするまでに玉龍歌から玉龍賦までの200年の試行錯誤があったのではないかと想像すると胸熱です。
以上が玉龍歌と違いのある部分です。下に原文を貼っておきますので、よろしければ皆さんも探していただき発見がありましたら教えて下さい。
次回は『勝玉歌は玉龍歌に本当に勝てるのか!?』を検証していきたいと思います。
夫參博以為要。輯簡而舍煩。總玉龍以成賦。信金鍼以獲安。原夫卒暴中風。頂門百會。腳氣連延。里絕三交。頭風鼻淵。上星可用。耳聾腮腫。聽會偏高。攢竹頭維。治目疼頭痛。乳根腧府。療氣嗽痰哮。風市陰市。驅腿腳之乏力。陰陵陽陵。除膝腫之難熬。二白醫痔漏。間使勦瘧疾。大敦去疝氣。膏肓補虛勞。天井治瘰癧癮(病字去丙為軫)。神門治呆癡笑咷。欬嗽風痰。太淵列缺宜刺。尪羸喘促。璇璣氣海當知。期門大敦。能治堅痃疝氣。勞宮大陵。可療心悶瘡痍。心悸虛煩刺三里。時疫㾬瘧尋後谿。絕骨三里陰交。腳氣宜此。睛明太陽魚尾。目證憑茲。老者便多。命門兼腎俞而著艾。婦人乳腫。少澤與太陽之可推。身柱蠲嗽。能除膂痛。至陽卻疸。善治神疲。長強承山。灸痔最妙。豐隆肺腧。痰嗽稱奇。風門主傷冒寒邪之嗽。天樞理感患脾泄之危。風池絕骨。而療乎傴僂。人中曲池。可治其痿傴。期門刺傷寒未解。經不再傳。鳩尾鍼癎癲已發。慎其妄施。陰交水分三里。蠱脹宜刺。商丘解谿坵墟。腳痛堪追。尺澤理筋急之不用。腕骨療手腕之難移。肩脊痛兮。五樞兼於背縫。肘攣疼兮。尺澤合於曲池。風濕搏於兩肩。肩髃可療。壅熱盛乎三焦。關沖最宜。手臂紅腫。中渚液門要辨。脾虛黃疸。腕骨中脘何疑。傷寒無汗。攻復溜宜瀉。傷寒有汗。取合谷當隨。欲調飽滿之氣逆。三里可勝。要起六脈之沉匿。復溜稱神。照海支溝。通大便之祕。內庭臨泣。理小腹之䐜。天突膻中醫喘嗽。地倉頰車療口喎。迎香攻鼻窒為最。肩井除臂痛如拏。二間治牙疼。中魁理翻胃而即差。百勞止虛汗。通里療心驚而即差。大小骨空。治眼爛能止冷淚。左右太陽。醫目疼善除血翳。心俞腎俞。治腰腎虛乏之夢遺。人中委中。除腰脊痛閃之難制。太谿崐崙申脈。最療足腫之迍。湧泉關元豐隆。為治屍勞之例。印堂治其驚搐。神庭理乎頭風。大陵人中頻瀉。口氣全除。帶脈關元多灸。腎敗堪攻。腿腳重疼。鍼髖骨膝關膝眼。行步艱楚。刺三里中封太冲。取內關於照海。醫腹疾之塊。搐迎香於鼻內。消眼熱之紅。肚痛祕結。大陵合外關於支溝。腿風濕痛。居窌兼環跳於委中。上脘中脘。治九種之心痛。赤帶白帶。求中極之異同。又若心虛熱壅。少冲明於濟奪。目昏血溢。肝俞辨其實虛。當心傳之玄要。究手法之疾徐。或值挫閃疼痛之不定。此為難擬定穴之可祛。輯管見以便誦讀。幸高明而無哂諸。
100日後に完成する玉龍歌現代語訳
令和3年1月16日
天赦日+一粒万倍日の何か始めなくてはならないというプレッシャーに勝てませんでした。
今年の目標として古典をちゃんと読む。というものがあるので、とりあえず玉龍歌を自分なりに読んで現代語訳を付けていきたいと思います。
1月16日の時点では簡体字をコピペしたままの白文ですが、100日後には完成しているはずです。
天赦日+一粒万倍日に始めたことが成就しないはずはないので。
扁鹊授我玉龍歌,玉龍一試絶沈疴,玉龍之歌真罕得,流伝千載無差訛。
マイメンがウチにくれた玉龍歌、一回やったら絶対いいの分かるから玉龍歌しか勝たん。
我今歌此玉龍訣,玉龍一百二十穴,医者行鍼殊妙绝,但恐時人自差別。
とりま120穴歌うからやってみたら?ワンチャンあるっしょ、でも人と場所は選んで。
補瀉分明指下施,金鍼一刺顕明医,伛者立伸偻者起,従此名揚天下知。
補瀉ちゃんとしたら一刺しでゴッドハンドなれるし。おばあちゃんの腰も伸びるし、マジ卍。
中風不語最難医,髪際頂門穴要知,更向百会明補泄,即時蘇醒免災危。
・中風不語マジ無理、ぴえん超えてぱおん超えて不語ん、顖会と百会に補瀉したら即やりらふぃー。
人事不省に対しての督脈としてなのかなと考えますが、中風で頭の経穴を使うのことを1329年からしてるのってすごいのでは?
と思ったんですが、史記にて外三陽五会として尸厥に対し使われているらしいので、遥か昔から意識不明は頭に鍼刺しとけってなってたんでしょうか。
鼻流清涕名鼻渊,先瀉後補疾可痊。若是頭風并眼痛,上星穴内刺无偏。
・サラサラ鼻水は鼻淵、ぴえん。まず瀉法をして、その後に補法。
頭痛と眼痛が一緒にきたら上星に刺す、これマヂ。
(わかる)
頭風呕吐眼昏花,穴取神庭始不差。孩子慢驚何可治,印堂刺入艾还加。
・頭痛でゲロって目がチカチカしてる奴とか殆どが薬でラリってるけど、そうじゃないなら神庭。
小児のひきつけは印堂。
(ここも醒脳したい感じの配穴なんでしょうか。ところで若者言葉もうマヂムリ。マヂカルムリリー)
頭項強痛難回顧,牙疼併作一般看,先向承漿明補瀉,後鍼風府即時安。
・頭項が痛み、頚部回旋できず、歯痛があるものは承漿に補瀉した後、風府に鍼して即効く。
(この歯痛は上下どっちの歯なのか?)
偏正头风痛难医,丝竹金针亦可施,沿皮向后透率谷,一针两穴世间稀。
・まぢヤバい頭痛は糸竹空から卒谷に向かって透刺。
1本で2穴刺すとかレアじゃね?
(偏正頭痛って偏頭痛でいいんでしょうか?透刺してドヤる王國瑞?かわいいですね)
偏正头风有两般,有无痰饮细推观,若然痰饮风池刺,倘无痰饮合谷安。
・頭痛は痰の有無を要チェック。痰ありは風池、無しは合谷でおけまる。
痰の有無で風池か合谷か変わるのが分からない。風池で痰どうにかできる?
この前の3つ頭痛に対しての配穴が書かれていますが、どれもタイプが違いますよね。
承漿風府を正中の痛み、糸竹空卒谷を側頭部痛、風池は頚部から、合谷は遠隔でみたいな分け方もできるなと、歌賦の内容無視してますけど。
口眼㖞斜最可嗟,地仓秒穴连颊车,㖞左泻右依师正,喎右泻左莫令斜。
・顔面麻痺ぴえん。地倉から頬車へ透刺。麻痺が左なら右を瀉す、右なら左を。
(巨刺するのお洒落ですね)
不闻香臭从何治?迎香两穴可堪攻,先补后泻分明效,一针未除气先通。
・嗅覚異常は迎香。先補後瀉すると明らかにアガる↑
(医学綱目には同様の症状に対し瀉多補少と書かれており、多分瀉多めの方が良いのではないかと。新型コロナウィルスの嗅覚異常にも効いたらいいですね)
耳聋气闭痛难言,须刺翳风穴始痊,亦治颈上生瘰疬,下针泻动即安然。
・耳聞こえてないの?超ウケるw翳風使いなよ。あと頚部リンパ結核の時は瀉ね。
耳聋之症不闻声,痛痒蝉鸣不快情,红肿生疮须用泻,宜从听会用针行。
・あんたも耳聞こえないの?耳鳴りも?いや赤いしメッチャ掻いてんじゃん。聴会瀉そ。
偶尔失音言语难,哑门一穴两筋间,若知浅针莫深刺,言语音和照旧安。
・失語には両筋の間にある瘂門、浅く刺して深刺しはしない。言葉は昔のようになる。
眉间疼痛苦难当,攒竹沿皮刺无妨,若是眼昏皆可治,更针头维即安康。
・眉間の痛みは超キツイ。攅竹に皮膚に沿って刺す。もし眼が暗くて見にくくても治る。頭維に鍼で更に良い。
两眼红肿痛难熬,怕日羞明心自焦,只刺睛明鱼尾穴,太阳出血自然消。
・両眼が赤く腫れて耐えられない、明るいところも見れない。睛明と魚尾、太陽から出血させたら自然と消える。
眼痛忽然血贯睛,羞明更涩最难睁,须得太阳针出血,不用金刀疾自平。
・いきなり目痛くて真っ赤なってり、眩しさキツくて瞬きヤバみ。とりま太陽血出したら手術も要らずヤバみざわ。
心血炎上两眼红,迎香穴内刺为通,若将毒血搐出后,目内清凉始见功。
・心血炎上で両目が赤い、迎香の内に刺す。もし毒血を出せば、目がスッキリ。
强痛脊背泻人中,挫闪腰酸亦可攻,更有委中之一穴,腰间诸疾任君攻。
・背骨のこわばりは人中を瀉す、ぎっくり腰もまた攻めれる。さらに委中一穴、腰の疾患は君の攻めに任せる!
急に任されても困ります。
肾若腰痛不可当,施为行止甚非常,若知肾俞二穴处,愈见医科神圣功。
・腎が弱くて腰が疼く、施術し難い。もし腎兪二穴を知っていれば自然に癒える。
环跳能治腿股风,居髎二穴认真攻,委中毒血更出尽,愈见医科神圣功。
・環跳は坐骨神経痛を治す。居髎を真に使う。委中で毒血を出し尽くせば、効果は神医の如く。
膝腿无力身力难,原因风湿致伤残,倘知二市穴能灸,步履悠悠渐自安。
・足に力が入らず立つのも難しい、原因は風湿による傷である。二市に灸すれば、徐々に安らぐ。
髋骨能医两腿痛,膝风红肿不能行,必针膝眼膝关穴,功效须臾病不生。
・髋骨は両下肢の痛みを治す。膝が赤く腫れて歩けない、必ず膝眼と膝関、すぐに効く。
寒湿脚气不可熬,先针三里及阴交,再将绝骨穴兼刺,肿痛登时立见消。
・寒湿脚気で耐えられない、まず三里と陰交。そのあと絶骨、腫れはたちどころに消える。
肿红腿足草鞋风,须把昆仑二穴攻,申脉太溪如再刺,神医妙诀起疲窿。
・足が赤く腫れる草鞋風は崑崙二穴、申脈太渓も刺せば、腰の曲がった老人を立たす神医のように効く。
脚背痛起丘墟处,斜针出血即时轻,解溪再与商丘识,补泻行针要辨明。
・足背痛は丘墟から出血させればすぐ軽くなる、そして解渓と商丘を補瀉をよく考えて使う。
行步艰难疾转加,太冲二穴效堪夸,更针三里中封穴,去病如同用手抓。
・歩行困難が酷いときは太衝二穴、さらに三里中封で病を抓み取るように治る。
膝盖红肿鹤膝风,阳陵两穴亦堪攻,阴陵针透尤收敛,红肿全消见异功。
・膝蓋骨が赤く腫れる、鶴膝風は陽陵泉二穴。陰陵泉まで透刺するとさらに効き、腫れも全て消える。
腕中无力痛艰难,握物难移体不安,腕骨一针虽见效,莫将补泻等闲看。
・手首に力が入らず痛くて耐え難い、物を握って動かせない、腕骨に一鍼で効果がある。
(最後の一文がわからない。まさに補瀉を見守ることなかれ?)
急痛两臂气攻胸,肩井分明穴可攻,此穴原来真气聚,补多泻少应其中。
・急に両腕が痛み胸がキュン、明らかに肩井、この穴はもともと真気が集まる、補を多く瀉を少なくすればそれに応ず。
肩背风气连臂疼,背缝二穴用针明,五枢亦治腰间病,得穴方知疾顿轻。
・肩背が風により疼く、背縫二穴を使う。五枢は腰痛を治す、経穴の使い方を知れば病は即軽くなる?
两肘拘挛筋骨连,艰难动作欠自然,只将曲池针泻动,尺泽兼行见圣传。
・両肘が拘縮し、自然に動かせない、曲池を瀉す、尺沢も使うのが聖なる伝え。
肩端红肿痛难当,寒湿相争气血旺,若向肩颙明补泻,管君多灸自安康。
・肩関節外端が赤く腫れ触れない、寒湿が気血と争っている。もし肩髃に向けて明確な補瀉を加え、君が灸をたくさん据えれば自然に治る。
筋急不开手难伸,尺泽从来要认真,头面纵有诸样症,一针合谷效通神。
・筋が引きつり手を伸ばしにくい時は、尺沢を知っておく。顔面の諸症状への合谷の効き目は神に通ずる。
腹中气块痛难当,穴法宜向内关防,八法有名阴维穴,腹中之疾永安康。
腹中の気塊が痛み耐え難い、内関で防ぐ、(奇経の陰維?陰維穴?)腹中は永らく安泰。
腹中疼痛亦难当,大陵外关可消祥,若是肋痛并闭结,支沟奇妙效非常。
・腹中が痛み耐え難い、大陵外関で消える。もし胸肋部が痛み便秘なら、支溝が非常に効果。
脾家之症最可怜,有寒有热两相煎,间使二穴针泻动,热泻寒补病俱痊。
脾の病は最もかわいそう、寒熱両方で苦しむ、間使二穴を瀉で動かす。熱なら瀉、寒なら補う?
(高武の玉龍賦には間使、剿疟疾とあるのでマラリアとしてるようです。)
九种心痛及脾痛,上皖穴内用神针,若还脾败中脘补,两针神效免灾侵。
九種の心痛および脾痛は上脘へ鍼。もし脾敗なら中脘を補う。二穴の神の効果で災いを免れる。
痔漏之疾亦可憎,表里急重最难禁,或痛或痒或下血,二白穴在掌中求。
痔ろうは憎らしい、腹が引きつったり、痛んだり痒かったり出血があったり、腕に二白がある。
三焦之气壅上焦,口苦舌干岂易调,针刺关冲出毒血,口生津液病俱消。
・三焦の熱が上焦を塞ぐ、口と舌が乾き苦い、鍼で関衝から毒血を出せば、津液が生じ病は消える。
手臂红肿连腕痛,液门穴内用针明,更将一穴名中渚,多泻中间疾自轻。
・上肢が赤く腫れ痛む、液門に鍼をする、更に中渚に瀉を多くすれば疾病は自然に軽くなる。
中风之症症非轻,中冲二穴可安宁,先补后泻如无应,再刺人中立便轻。
・軽くない中風は中衝二穴で安らかに、先に補い後に瀉す、それでもダメなら人中で直ぐに軽快する。
胆寒心虚病如何?少冲二穴最功多,刺入三分不着灸,金针用后自平和。
胆の寒や心の虚はどうするか?少衝二穴が最も効く、三分刺し灸はしない、金鍼を用いれば自然に平和になる。
时行疟疾最难禁,穴法由来未申明,若把后溪穴寻得,多加艾火即时轻。
季節性のマラリアは最も難しい、穴法の由来は明らかでないが、後渓を尋ねて沢山灸を据えると即良くなる。
牙痛阵阵苦相煎,穴在二间要得传,若患翻胃并呕吐,中魁奇穴莫教偏。
・歯が痛い時は二間と伝える、もし胃がひっくり返ったら、騙されたと思って奇穴の中魁。
乳鹅之症少人医,必用金针疾始除,如若少商出血后,即时安稳免灾危。
扁桃腺の腫れを治せる人は少ない、金鍼を使って開始する、少商から出血させた後は、即安らかで危険を免れる。
如今瘾疹疾多般,好手医人治亦难,天井二穴多着灸,纵生瘰疬灸皆安。
・蕁麻疹などは、上手な人でも難しい、天井二穴に多壮灸、瘰癧もみな安らか。
寒痰咳嗽更兼风,列缺二穴最可攻,先把太渊一穴泻,多加艾火即收功。
風寒の咳嗽、列缺二穴が最もよく攻める、まず太淵一穴を瀉し、多壮灸をすれば即収まる。
痴呆之症不堪亲,不识尊卑枉骂人,神门独治痴呆病,转手骨开得穴真。
・痴呆になったら堪えられない、誰でも罵る老害、神門だけが治す、手を返して開くと真の穴が得られる。
连日虚烦面赤妆,心中惊悸亦难当,若寻通里穴寻得,一用金针体便康。
連日の虚煩で化粧をしたように顔が赤い、すぐ驚くのは難しい、もし通里を尋ねて得たら、一本の金鍼で康らか。
风眩目烂最堪怜,泪出汪汪不可言,大小骨空皆妙穴,多加艾火疾自痊。
眼がチカチカして、涙が溢れて止まらない、大小骨空皆効く、沢山お灸すれば治る。
(この大小骨空について針灸奇穴辞典では"眼瞼化膿で涙が断えず流れて苦しい者に、大・小骨空はまことに著効をみるツボである"と訳がありまして、眩暈についての記載がないんですね。
風眩という文字を見ると眩暈を想像してしまうのですが、风眩目烂最堪怜で風により視界が悪いこと意味しているのでしょうか)
妇人吹乳痛难消,吐血风痰稠似胶,少泽穴内明补泻,应时神效气能调。
・乳腺炎は痛みが消えにくい、吐血や風痰にも、少沢に明確な補瀉をすれば、神のような効果で調う。
满身发热痛为虚,盗汗淋淋渐损躯,须得百劳椎骨穴,金针一刺疾俱除。
全身が虚のため発熱、寝汗で徐々に身体を損なう、百労に金鍼一刺しで疾病は除かれる。
忽然咳嗽腰背痛,身柱由来灸便轻,至阳亦治黄疸病,先补后泻效分明。
突然咳が出て背中が痛む、身柱への灸で軽くなる、至陽もまた黄疸を治す、先に補い後に瀉せば効果は明らか。
肾败腰虚小便频,夜间起止苦劳神,命门若得金针助,肾俞艾灸起邅迍。
・腎敗腰痛は頻尿、夜間に起きてしまいうんざり、命門の鍼と腎兪の灸で動かないものも動く。
九般痔漏最伤人,必刺承山效若神,更有长强一穴是,呻吟大痛穴为真。
・九種の痔は最も人を傷つける、承山に刺せば神の効果、更に長強の一穴、呻き苦しむのが真の穴。
伤风不解嗽频频,久不医时劳便成,咳嗽需针肺俞穴,痰多宜向丰隆寻。
風邪が治らず咳が頻繁にでる、長く治療をしていないのは肺結核になる、咳には肺俞に鍼、痰が多いものは豊隆を尋ねる。
膏肓二穴治病强,此穴原来难度量,斯穴禁针多着灸,二十一壮亦无妨。
・膏肓二穴はつよつよのつよ、使い方が難しい、禁鍼で多壮灸、二十一壮でも大丈夫。
腠理不密咳嗽频,鼻流清涕气昏沉,须知喷嚏风门穴,咳嗽亦加艾火灸。
・腠理ガバガバで咳が頻繁に出る、鼻水が出て気分も下がる、くしゃみには風門、咳には灸を深く浸透させる。
胆寒尤是怕惊心,遗精白浊实难禁,夜梦鬼交心俞治,白环俞沾一般针。
・胆寒は心がビビッて起きる、遺精や白濁は耐え難い、夢の中でセックスするのは心兪白環兪に鍼する。
肝家血少目昏花,宜补肝俞力便知,更加三里频泻动,还光益血自无差。
・肝に血が少なく眼がぼんやりする、肝兪へ補法して気合を入れる、更に三里に瀉法を頻繁に加えれば、自然と眼に光が戻る。
脾家之症有多般,致成翻胃吐食难,黄疸亦须寻腕骨,金针必定夺中脘。
・脾の病はいろんな症状がある、ゲロってるのを治すのは難しい、黄疸は腕骨を尋ねる、金鍼で必ず中脘を瀉す。
伤寒无汗泻复溜,汗出多时合谷收,六脉若兼沉细证,下针才补病痊瘳。
・汗の出ない風邪ひきは復溜を瀉す、汗が多ければ合谷、六脈が全て微細なら、金鍼でちょっと補えば脈が浮く。
大便闭结不能通,照海分明在足中,更把支沟来泻动,方知秒穴有神功。
・大便が固まって動かない、照海が明らかに足にある、更に支溝を瀉して動かせば、神の力で秒で出る。
小腹胀满气攻心,内庭二穴要先针,两足有水临泣泻,无水方能病不侵。
・下腹が張って気が心を攻める、内庭二穴にまず鍼、両足に水があれば臨泣を瀉す、(水は病気を防ぐことはできません?)
七般疝气取大敦,穴法由来指侧间,诸经俱载三毛处,不遇师传隔万山。
・七種の疝気は大敦、穴の取り方は指の間、諸々の本には三毛の処とある、(師匠に巡り合えなくても伝わる)
传尸劳病最难医,涌泉出血免灾危,痰多须向丰隆泻,气喘丹田亦可施。
・肺結核は最も難しい、湧泉から出血させれば災厄を免れる、痰が多ければ豊隆を瀉す、咳が酷ければ丹田に灸しても可。
浑身疼痛疾非常,不定穴中细申祥,有筋有骨须浅刺,灼艾临时要度量。
・全身が痛み非常事態、穴とか関係なくよく調べて、筋や骨を浅く刺す、灸はその都度加減を決める。
劳宫穴在掌中寻,满手生疮痛不禁,心胸之病大陵泻,气攻胸腹一般针。
・労宮は掌を尋ねる、手できものができて痛いときに使う、胸の病には大陵を瀉す、気が胸を攻める時もこれ。
哮喘之症最难当,夜间不睡气遑遑,天突秒穴宜寻得,膻中着灸便安康。
・喘息はマジムズイ、夜眠れない、天突を尋ねる、膻中に灸を着けて安泰。
鸠尾独治五般痫,此穴须当仔细观,若然着灸宜七壮,多则伤人针宜难。
・鳩尾は五種類の癲癇を治す、この穴は丁寧に観察して、七壮がちょうどいい、多ければ人を傷つけ鍼も難しい。
气喘急急不可眠,何当日夜苦忧煎,若得璇玑针泻动,更得气海自安然。
・喘息で眠れない、いつになったら眠れるのか、もし璇璣を瀉し動かし、更に気海を取れば自然に安らか。
肾强疝气发甚频,气上攻心似死人,关元兼刺大敦穴,此法亲传始得真。
・腎強疝気が頻繁に起こる、気が上がって心を攻めて死んだようになる、関元と大敦を刺す、この方法は実際に行って真実を得る
水病之疾最难熬,腹满虚胀不肯消,先灸水分并水道,后针三里及阴交。
・水腫の病は最も耐え難い、腹満で虚脹し消えない、先に水分と水道に灸して、後に足三里と陰交に鍼する。
肾气冲心得几时,须用金针疾自除,若得关元并带脉,四海谁不仰明医。
・腎気が心を衝くのはいつ起こる、金鍼を使えば病を除ける、もし関元と帯脈を得れば、四海に名が知れる。
赤白妇人带下难,之因虚败不能安,中极补多宜泻少,灼艾还需着意看。
・婦人の帯下は難しい、虚の為に安らげない、中極に補を多く瀉を少なく、灸は必要かどうかみる。
吼喘之症嗽痰多,若用金针疾自和,俞府乳根一样刺,气喘风痰渐渐磨。
・喘息で咳と痰が多い、金鍼を用いれば自然と和む、俞府と乳根を同様に刺せば、呼吸困難と痰は徐々に消える。
伤寒过经犹未解,须上期门穴上针,忽然气喘攻胸膈,三里泻多须用心。
・傷寒がなかなか治らないものは、期門に鍼をする、急に気咳が胸膈を攻める、三里に瀉を用心して使う。
脾泻之症别无他,天枢二穴刺休差,此是五脏脾虚症,艾火多添病不加。
・脾による下痢は多くなくなくなくない、天枢二穴に刺せば休まる、これは五臓の脾虚症、灸を多くすれば病は悪化しない。
口臭之疾最可憎,劳心只为苦多情,大陵穴内人中泻,心得清凉气自平。
・口臭は最も憎い、気を付けても苦しい、大陵と人中を瀉す、心は清々しく落ち着く。
穴法深浅在指中,治病须臾显妙功,劝君要治诸般疾,何不当初记玉龙。
・穴の深さは指で探れば、病の治るのはちょっとの間で効く、諸々の病を治したいなら、なぜ玉龍歌を覚えないのか。
令和3年4月27日
100日目となってしまったので、日本語訳だけ付けてとりあえず完成とします。
またちょこちょこ直して、いつかは完成するでしょう。
いやー、30代には若者言葉は難しい。
女子高生と遊びて~!
圧倒的感謝
振藝先生。
神野先生。
漫才から考える鍼灸施術
漫才に於ける『つかみ』そしてその『つかみ』の早さ。
これはM-1グランプリ2017最終決戦にて、華丸大吉がとろサーモンに1票を投じる理由になった程に大事なものであります。
それほどまでに重要な『つかみ』という行為。
これを鍼灸施術に応用する《鍼灸=漫才論》を今回はお伝えしていきたいと思います。
漫才での『つかみ』の目的は
・今からどんな漫才をするのか、どちらがボケツッコミなのかを教える。
・ネタのメインとなる部分への前フリ。
そして、一番の目的は
・芸人とお客さんとしての関係性を作る。
だと考えます。
これを鍼灸施術に例えると
・今からどんな施術を行うのかを見せる。
・その後のメインの施術に対してスムーズに移行する為。
そして鍼灸に於いても一番の大切な部分は
・鍼灸師と患者さんとしての関係性を作る。
となります。
具体的に私の施術例をあげると…
まず患者さんに対し、必要な問診とインフォームドコンセントを済ませたら(これが既に『つかみ』になっている場合もありますが)
主訴と関係なかったとしても、まず外関に浅刺して肩や腰を動かしてもらいます。
これによって
・基本的に浅刺であること。
・鍼を刺した後は自動、他動を含めて患者さんを動かすこと。
・そのために鍼が刺さった状態で身体を動かすことの不安を除く。
ということを伝えます。
そして一番の目的である鍼灸師と患者さんとしての関係性。
どんなに素敵な口コミをもらっていても、初診の患者さんにとって私はどこの馬の骨か分からない鍼灸師です。
鍼灸が初めての患者さんであれば《私=鍼を刺す奴》という認識であることが多いですが、これを《私=鍼を刺して身体を変化させる奴》にすることが何より重要だと考えています。
あわよくば患者さんにとって《鍼を刺してなんか身体を良くしてくれる奴》という存在になれれば、暴論ですが何をやろうがウケます。
鍼が浅かろうが深かろうが、少なかろうが多かろうが、刺そうが刺すまいが関係ありません。
今のテレビで言うと千鳥のポジションです。
わしゃ千鳥になりてぇんじゃ。
…とは書きましたが、つかみの変化は小さくても良いです。
なんなら変化がなくても大丈夫。
患者さんに「なるほど、鍼でこういう変化が起こるのね(変化を期待しているのね)」ということを植え付けるだけでも意味があると思います。
そして1回で変わらなかったとしても、試行錯誤しながら患者さんのツボを探っていけば良いのではないでしょうか。
どんな些細なキッカケも見逃さない。
ずん飯尾さんになりたい。
そして施術に入る前の、いわゆる宣伝も私の解釈では『つかみ』として使われていると考えます。
丁寧に作られた綺麗なホームページは患者さんに届きやすいでしょうし、私のことが書かれている!と思わせたらバッチリです。
延べ何万人を施術しました!という文句は技術を裏打ちするものと一般の方であれば思うでしょう。
売上自慢は学生、初学者には憧れでしょうし。
顔やら身体に鍼を沢山刺した写真をネット上に上げるのは、鍼をたくさん刺すべしという考えの方々には有効なんでしょう。
ネットで信者を作りたい。
でもキングコング西野には絶対なりたくない。
どんな方法をとるのも施術者の好みとセンスですが『つかみ』はその後のネタの良し悪しすらひっくり返す可能性があるものだと思いますので、なるべく施術の早い段階で患者さんを『つかむ』ことが重要です。
もちろんその後のネタで絶対笑いをとれる!絶対に症状をとれる!と自信があれば、敢えて『つかみ』を引っ張るという手法もアリです。
とにかくルールを守った上で、個人の思想、人間性でもって笑いをとったもの勝ちじゃないのか?と思っているので、本人が漫才だと言えば漫才だろうと。
(批判する自由はあるけれども)
施術者側が鍼灸だと言えば鍼灸だろうと。
(批判する自由はあるけれども)
なによりマヂカルラブリーの漫才は面白かった!
優勝おめでとう!
私は東京ホテイソンがイチ押しでした。
結果は10位だけれども個人的には一番面白かった!
なんならランジャタイが一番笑った!
キュウのオチも良かったし、金属バットもコウテイも豪腕だった!
タイムキーパーは2年目と思えないくらい良くできたネタだったし、ゆにばーすも面白かった!
もう全部優勝!!!
千金十一穴歌追記
先月のブログにて千金十一穴歌について調べ、千金十一穴歌というタイトルなのに10穴しか記載がないという発見があったのですが、その後調べていく内に新たな事実が分かってきました!
ヒントの無い状態から考えた時、まず"千金"という名前から孫思邈の千金要方が浮かんできます。
気付かなかったんですね😂
— Oku.. (@meteoric12) 2020年10月31日
明代の書物なので、
11番目の経穴が書かれた木簡が抜けてるとかもなさそうですし、
そもそもそれまでに書かれている疾患部位は、腹、頭面、腰背、胸首、膝脇でほぼ網羅されてますよね🤔
ならば、千金十一穴の“千金”は、孫思邈先生の千金方をフィーチャーしていると考えると…
老師からのご意見もいただきました。
という訳で千金要方が読みたいのですが母校の図書館が閉館中であり、ダメもとでGoogle先生に尋ねてみます。
Googleplayブックスに余裕でありました。
しかも全部で800円ほど!
これらを購入してとにかく探しまくります。
総ページ数4287ページ…これらを1つ1つ虱潰しに探す必要はありません。
なぜならGoogleplayブックスだから!
playブックス最高!
Google先生最高!!!
『十一』『十一穴』で検索をかけます。
すると、どうでしょう!
ない!!!
期待してるのはない!
千金宝要に関しては全くなし。
半ば諦めかけましたが、私の微かな記憶に前回調べている中で類経に千金十一穴の記載があると見たような気がするのです。
ただもう一度そのページを確認したいのに見つからない…膨大な情報がありすぎるGoogle先生の唯一のデメリットです。
仕方ないので類経にヒントがあることを期待して探します。
もちろんGoogle先生、playブックス様で購入。
なんと!
この中の類経図翼に千金十一穴の記載がありました!
そして下記が前回のブログで使った、鍼灸大全に記載されている(らしい)千金十一穴歌です。
比べてみましょう。
三裏内庭穴,肚腹中妙訣。
曲池與合谷,頭面病可徹。
腰背痛相連,委中崑崙穴。
胸項如有痛,後溪並列缺。
環跳與陽陵,膝前兼腋脅。
可補即留久,當瀉即疏泄。
三百六十名,十一千金穴。
お分かりいただけますでしょうか…
最後の一文が!
"三百六十名,千金十一穴"と"百而三百六,不離十一訣"で違っています。
(細かいことをいうと補法の記載もちょっとだけ違います)
そうすると、これはどちらが正しいのでしょう…?
鍼灸大全が書かれたのは1439年、類経図翼が書かれたのが1624年らしいので、ネットのものが両方とも原文と同じならば200年の間で書き換わったのか?
ですが前回の拾ってきたものが間違っているだけかも知れないし、このplayブックスの類経が正しいものであると確証はありません。
そもそも鍼灸大全に載っているものがオリジナルなのか、もっと古い出典があるのかも分かりませんが間違いなく言えることは…
"百而三百六,不離十一訣"の方がカッコいい!
では"不離十一訣"はどういう意味なのか?
中国語を読むのは面倒ですが5文字くらいなら頑張って調べてみます。
不離:切り離せないこと。
訣:戦術、秘訣。
なるほど…
十:10,十,第10,10番めの。
十は完全な,十分な。非常に多くの。
という意味もあるようですがここでは数を表しているでしょう。
そして『一』がまあ沢山の意味があって整理してコピペするもの大変なので、興味ある方は各自調べてください。
以上の意味をなんとなくつなぎ合わせると…
360ある経穴のなかで、切り離すことのできない、10の経穴の、秘訣の1つである。
みたいな意味なのではないかと考えます。
ところで今回のブログはなるべく分かりやすく書けないものかと、鍼灸知識0の妻でも理解できるように説明しながら書きました。
一応大筋を理解してくれた妻が「こういうことやろ?挿絵に使ってええで」と作ってくれたものです。
まあ概ね合ってるけど…なんかなあ…
一応使うけど…
では最後に、確信を得るためにGoogle先生に翻訳してもらいましょう。
11なんかーい!!!
なにが11 No torikkuか!!!
Google翻訳は役立たずなので、Weblioを使いましょう!
いや、11から離れろ!!!
僕の千金十一穴歌
千金十一穴歌をご存知でしょうか?
私は先日初めて知りました。
こんないい名前の歌賦なのに見逃していたとはお恥ずかしい限りです。
千金十一穴…
選び抜かれた十一穴という感じがしてカッコいいですね。
まず鍼灸大全に書かれているとされる原文です。
三裏内庭穴,肚腹中妙訣。
曲池與合谷,頭面病可徹。
腰背痛相連,委中崑崙穴。
胸項如有痛,後溪並列缺。
環跳與陽陵,膝前兼腋脅。
可補即留久,當瀉即疏泄。
三百六十名,十一千金穴。
なるほど、分からん。
中国語はさっぱりですが、なんとなく読んでいきます。
三裏内庭穴,肚腹中妙訣。
三里と内庭がお腹の疾患に妙に効く。
引用したサイトは"三裏"となっていましたが、類経附翼に記載されている千金十一穴歌は"三里"と書かれているので誤表記でしょうか。
理だったら澤田健イズムがあって良かったんですが。
曲池與合谷,頭面病可徹。
曲池と合谷は頭と顔の病に。
普通のことしか言ってない。
腰背痛相連,委中崑崙穴。
腰と背中の連なる痛みに委中と崑崙。
これも分かる。
胸項如有痛,後溪並列缺。
ここはちょっと気になります。
他は同一経絡の中で2穴が選ばれているのに、これだけ後溪と列缺…
そして胸と頚の痛みに対して使うと。
肺の是動病にはありますが、肺経で胸の痛みっていうのはあんまりないイメージです。
環跳與陽陵,膝前兼腋脅。
環跳と陽陵泉は膝前と脇を脅かす。
分かると言えば分かるけど、膝の外側ではなくて前なんですね。
可補即留久,當瀉即疏泄。
補なら留めて瀉は漏らす?
三百六十名,十一千金穴。
360穴ある中での11の千金穴…?
ということかな、と読んでみましたが…
11穴なくない!?
①三里…②内庭…③曲池…④合谷…⑤委中…⑥崑崙…⑦後溪…⑧列缺…⑨環跳…⑩陽陵…
10穴…
縦読みとか斜め読みすると隠れ経穴が現れるみたいなことでもなさそうです。
調べてみると百度百科には
千金十一穴歌 ,针灸歌诀名。见《针灸大全》。内容列举十个常用效穴,较《天星十二穴歌》少承山、太冲、通里,而多一后溪。全文为:“三里、内庭穴,肚腹中妙诀;曲池与合谷,头面病可彻;腰背痛相连,委中、昆仑穴;胸项如有痛,后溪并列缺;环跳与阳陵,膝前兼腋胁。可补即留久,当泻即疏泄。三百六十名,十一千金穴。”
"内容列举十个常用效穴"とあるので10穴で間違いなさそう。
ここに書かれているように天星十二穴歌に似ていますが、どの時代に作られたものなのでしょうか。
鍼灸大全の記載が初出だとすると千金十一穴の方が100年ほど後に作られていることになりますが、中身的には天星十二穴歌より古そうに思っていましたがどうでしょう。
そして最後の"十一千金穴"は"十一、千金穴"ではなく"十、一千金穴"と読むということ?
どういう意味…?
ここの部分、中国語読める方は是非教えてください。
これ以上は手詰まりなので、仮に千金11穴だとして『最後の1つは君が決めよう!君だけのオリジナル千金11穴を作ろう!』という意味を込めて千金11穴となったと言う説をでっち上げていきたいと思います。
さて、この中に1穴足すとしたら何がよいでしょうか?
個人的に治療として考えるなら足の陰経か腹部、下腹部を入れたいところですが、他の経穴を見るにほとんど陽経を使っています。(寧ろ列缺が邪魔)
1穴だけ選ぶとすれば、やはり任督脈から選ぶのがお洒落な気がします。
そして他の経穴と併せて陽寄りにするなら督脈ではないかと。
督脈から選ぶとすると…
私自身が澤田流の為どうしても補腎をしたくなってしまうので、命門か…
至陽はこれといった理由はないんですが、上下の境の感じがして好きなんですよね…
はたまた手足三陽の交会とされている大椎がいいのではないかと…
うーーーーーーーん…
大椎に決めた!
ついでに列缺が1人だけ陰経で邪魔なので外関を入れましょう。
何故なら外関が好きだから。
外関は思いっきり橈側に寄せれば列缺みたいなもんですしね。
以上のことから、私の千金十一穴歌はこんな感じになりました。
三裏内庭穴,肚腹中妙訣。
曲池與合谷,頭面病可徹。
腰背痛相連,委中崑崙穴。
肩項如有痛,後溪並外関。
環跳與陽陵,膝前兼腋脅。
通一身陽気、○○○大椎。
可補即留久,當瀉即疏泄。
三百六十名,十一千金穴。
大椎の前の文句が良いのが思いつきませんが、なかなか良い気がします!
そうしたらこれを古い和紙に書き写してどこかの蔵の隅っこに隠し、数百年後に価値のある鍼灸歌賦として勘違いされる日を心待ちにしたいと思います。
ハリトラーメン
私がかねてより提唱している《鍼灸=ラーメン論》というものがありまして…
鍼灸とラーメンというのは中国から渡ってきて日本独自の発展をしたという点で、ほぼ同じものと言っても過言ではありません。
店主、院長が頑固そうだったり腕組みしてたり、根拠なく自分が1番だと思っていたり、意義の分からないオリジナル技を考え出してみたり、ラーメン職人と鍼灸師の共通点を挙げだしたらキリがありません。
上記以外にも根拠はありますが、とにかく鍼灸とラーメンは同じもの。
ラーメン業界を紐解くことで鍼灸業界のことが分かるんです。
そして今回は伝統鍼灸の未来を、今一番面白いラーメン漫画『ラーメン再遊記』をテキストにしながら考えていきたいと思います。
(この記事における伝統鍼灸とは、柳谷素霊から始まった日本の鍼灸の各流派のこととさせて下さい)
まず知らない方の為に『らーめん再遊記』について説明させていただくと、『ラーメン発見伝』『らーめん才遊記』から続く、美味しんぼ的ラーメン漫画の3作目であり、主人公はかの有名なラーメンハゲこと芹沢達也。
主人公の芹沢達也についても念のために説明すると…
前々作『ラーメン発見伝』では主人公、藤本浩平のライバルとして、前作『らーめん才遊記』では主人公、汐見ゆとりの師匠として活躍し、彼の人気のお陰で今作まで続いている言っても過言ではありません。
ラーメンを大衆料理、B級グルメから脱却させるために数々の創作ラーメンを生み出し、自身の店だけでなくプロデュースを手掛けた店も繁盛させ、保守的で懐古主義な中華そば原理主義者たちを黙らせてきました。
作品中ではこういう輩はラーメンが好きと言いながらラーメンの進化を邪魔する者と描かれています。
そして《何の枠にも囚われない自由な創作麺料理》こそがラーメンの主流となり、その立役者であった彼はニューウェーブのカリスマ、天才的なラーメンコンサルタントとなりました。
そんな彼が今作『らーめん再遊記』では若手の台頭によりラーメンに対する情熱を失ってしまいました。
その若手とは芹沢をオールドウェーブ呼ばわりする男、米倉。
彼は自然養鶏の比内地鶏を使ったスープに、厳選した醤油、小麦を使い細部にまで拘り、高級フレンチに匹敵する新時代の料理を目指した「普通のラーメン」で日本のラーメン界で初めてムシュロン2つ星を獲得した、新世代系のエース。
芹沢はニューウェーブ系としてラーメンをB級グルメから脱却させるために尽力しましたが、世界的グルメガイドであるムシュロンに選ばれたのは自分よりも下の世代の米倉だったということが、芹沢の情熱が失われた要因でもあります。
ニューウェーブ系vs新世代系の構図から始まり、芹沢は如何にしてラーメンへの情熱を取り戻していくのか!?というところから話が始まります。
ラーメンの補足もしておきます。
ニューウェーブ系ラーメンというものは、ラーメンの進化を邪魔する保守的で懐古主義な中華そば原理主義者、昭和の中華そばへのアンチテーゼとして生まれました。
・脱B級グルメの本物志向
・創作ラーメンの重視
・こだわりの食材や調理法のアピール
・小綺麗で洒落た店作り
これらを売りに、それまでラーメンファンでなかった層を取り込みながらブームを拡大し、ラーメンを固有の文化へとなるよう上のステージへ押し上げました。
そして対する新世代系はニューウェーブが作り上げた流れの上で、昭和の中華そばの良いところは吸収し更にブラッシュアップし、ハイブリッド醤油ラーメンと言われるような本物志向のラーメンを作り上げました。
この昭和の中華そばに対しての考えがムシュロンに認められるか否かで芹沢と米倉、ニューウェーブ系と新世代系の明暗が分かれました。
芹沢(ニューウェーブ系)はアンチ昭和の中華そばであり、B級グルメに甘んじる前の世代への反発心からそれまでにない新しい味を生み出してきました。
それだけに昭和の中華そばを古臭い悪しきものとして考え、ブラッシュアップすることができなかった。
米倉(新世代系)はニューウェーブ系から影響を受けるものの昭和の中華そばに対しての反発心は無く、良いところは全て取り入れる姿勢。
そして昭和の中華そばのフレームを使い、ニューウェーブ系の方法論によって全てを本物へと昇華させることができました。
というのが作中での構図ですが、これは現実のラーメン業界でも似たような流れがあるそうです。
そしてこれを鍼灸業界に当てはめて考えてみると…
現在、ニューウェーブ系を担ってくれているのは美容鍼灸ではないかと。
美容鍼灸が伝統鍼灸のアンチテーゼから始まった訳ではないと思いますが、美容という視点での集客、鍼灸院らしからぬサロン的な内装であったり、既存の鍼灸院とは関係を持たなかった層を取り込んでくれています。
それだけで鍼灸が文化として完全に根付くかというと難しいと感じますが、あと一押し二押しがあれば…そうなってくれるのではと期待しております。
この美容鍼灸ブームが本当に本当にうまくいって、ラーメンが中華料理の1つからラーメンという確立された料理になったように、鍼灸が医療として、美容として1つの選択肢になれば良い思います…
と、そうなった上でですよ!
新世代系ラーメンのように美容鍼灸の良い部分を吸収し、かつ伝統鍼灸を取り入れブラッシュアップした新世代系鍼灸院が現れると!
そしてロートルになった洒落臭い美容鍼灸どもを蹴散らせて伝統鍼灸が第一線を奪う!!!
そこで初めて代替医療でもなく、美容の一部でもなく、鍼灸が鍼灸として確立された立場ができるのではないかと。
ラーメン業界を鑑みて今後の鍼灸業界でこういった流れが起こることは間違いないでしょう!
なので伝統鍼灸の業界のシェア低かろうが、崩壊の危機にあろうが大丈夫です!!!
今は美容鍼灸に任せて需要を広げてもらいましょう。
そして伝統鍼灸は腕を研くなり、後進を育てるなり来るべき日に備えてください。
頑張れ美容鍼灸!
負けるな伝統鍼灸!
そしたら美容鍼灸もしないし、伝統鍼灸でもない私はどうしたら良いのか分からないので、とりあえず天下一品食べてきますね。
外関の歴代名家応用
外関という経穴が好きなのでよく使います。(298日ぶり4度目)
今回は『要穴八十一』という本に記載される外関の歴代名家応用を抜粋しつつ、愚考していきたいと思います。
《黄帝内経》
・病実則肘攣、虚則不收。
霊枢の経脈編に
手少陽之別,名曰外関。去腕二寸,外繞臂,注胸中,合心主。病實則肘攣,虛則不收。取之所別也。
の記載がありますね。
外関の位置からしたら、そら腕には効くだろうと。
《甲乙経》皇甫謐、282年
・肘中濯濯、臂内廉不化及頭。
・耳焞焞渾渾無所聞、外関主之。
・外関、会宗主耳焞焞渾渾無所聞。
・外関、内庭、三里、大泉、商丘、主噼、噤
渾渾焞焞は医学百科に解説があり
病狀名。形容聽覺失聰,反應遲鈍之癥。多由濕濁上蒙,肝膽實火或腎氣虛所致。《素問·至真要大論》:“心痛耳鳴,渾渾焞焞。”《靈樞·經脈》:“是動則病耳聾渾渾焞焞。”
と書かれています。
黄帝内経には渾渾焞焞とあるのが、甲乙経はなぜ焞焞渾渾になっているのか?
今回はこの渾渾焞焞に注目していきたいと思います。(原典はどうなってるんでしょうか?)
《外台秘要》王燾、752年
・主肘中濯濯、臂内廉不化及頭、耳焞焞渾渾聾無所門聞、主噼、噤。
外台秘要も焞焞渾渾派のようです。
《玉龍経》王国瑞、1329年
治傷寒自汗盗汗、発熱悪風、百節酸疼、胸滿拘急、中風不遂、腰脚拘攣、手足頑麻冷痛、偏正頭風、眼中冷痛、冷涙、耳聾、眼風。
玉龍経の記載はいいですね、渾渾も焞焞言わないし。
個人的には外関に過分の期待を寄せているのでこれくらい効いてほしいところです。
《鍼方六集》呉崑、1618年
主耳聾焞焞渾渾、目翳、頬痛嗌腫、耳後痛、脅肋肘臂腫痛、無名指不用、五指盡痛不能握物、傷寒無汗、寒熱往来。
鍼灸大成以降は渾渾焞焞派が盛り返すかと思いきや、焞焞渾渾派の強さ健在。
気になるのが鍼方六集は傷寒の無汗なんですね。
玉龍経では傷寒自汗盗汗と書かれていましたが、どちらもいけるのでしょう!
三焦としての働きなのかも知れないし、もしくは他の経絡を介しての反応なのかと考えが広がりますが、とにかく効くのでしょう!!!
なぜなら外関だから!!!!!
《類経図翼》張介賓、1624年
・主治耳聾渾焞無聞、肘臂五指痛不能握、若脅肋痛者瀉之。
・外関主治臓腑熱、肘臂脅肋五指疼、瘰癧結核連胸頸、吐衄不止妄行。
渾焞派も現れてどうしたらいいのか。
類経は臓腑熱が書かれているのが良いですね。張介賓は腑としての三焦を意識していたのではないかしら?と想いを馳せます。